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母のちぎり絵

命あるものには必ず死が訪れます。いつ頃から理解していたかなどもう覚えもなく、それほど幼い時から何事にも限りがある「諸行無常」という概念を私たちは知っています。

しかし頭では分かっていることと身を持って知ることには大きな違いがあるように感じます。

 

亡くなられたお母様は、若い頃から40年以上も小売店でお義母様と一緒にお店を切り盛りされていました。朝6時から夜8時までお仕事に励んでいらっしゃいました。お仕事の疲れもあったにも関わらず、決して家庭をおろそかにするとはなかったそうです。

 

日々のお料理やお洗濯、お掃除など家事もしながら、三人のお子様のお弁当作りは勿論のこと、学校行事にも顔を出していたのだそう...

限られた時間の中で、疲れも厭わずお仕事にも家族に対しても真摯に向き合ってこられました。目をこすりながらなんとか身体を動かす日もあったでしょうが、毎日を無駄なく過ごしておいででした。

 

それは長年立ち続けたお店の暖簾を下ろされてからも変わることはありませんでした。内職や畑仕事にも精を出し、空いた時間には趣味を思う存分楽しんでいたお母様。

数あるご趣味の中でも「ちぎり絵」で沢山の作品を残し、数十点以上もの作品を式場内で展示させていただくことになりました。

教室で先生に習いながら、カサブランカや季節の花々を大小様々にちぎり絵で表現されました。まるで筆で写したかのような淡い色彩のなかに、ちぎり絵らしい柔らかなラインが、あたたかなぬくもりを感じさせてくれます。冬の寒さに似つかわしくない程、式場内はお母様の作られた花々で鮮やかに彩られ、足を運んでくださった参列者の皆様の目を釘付けにしました。

美しさに目を奪われたかと思えば、外した視線の先には可愛らしい干支の作品も。

その年の干支の作品を仕上げては、身内の方々にお配りしていたのだとか。

参列者の中にはお母様の作品を大事に持ち帰られる方もいらっしゃり、きっとお喜びだったことでしょう。

 

形となるちぎり絵という作品もそうですが、お母様が見せてくれた生き様や与えてくれた愛情が残された方々の胸にいつまでも残り続けています。それはお母様が身を持って教えてくれたことにほかなりません。限りある人生を一生懸命生きてこられた、他の誰でもない唯一無二の尊いご生涯でございました。大変お疲れ様でございました。

     

お母様という人生、作られた作品に出会えたこと。ご家族とのご縁を結んでくださったことに感謝いたします。また、当ブログへの掲載を許可くださいましたご家族の皆様方へも厚く御礼申し上げます。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

どうぞご自愛くださいませ。

 

文十鳳凰殿  西尾吉良斎場

河本

 

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