三日七日の法要、お勤め後のお話の中で「僕が身に着けているこの袈裟ね」と、お話しされる和尚様がいらっしゃいます。
「お参りに行ったところのおばあちゃんに『和尚さん、なんだん ボロボロの袈裟着て。袈裟も買えんの?わしが買うたろか?』って言われるほどのボロボロでしょ?」とおっしゃりながら、着ている袈裟を見せてくださいます。
裾はほつれ、パッチワークのように継ぎはぎの袈裟でした。
破れても破れても布を継ぎ足して、もう何十年も同じ袈裟を着ておられます。
昔、僧侶は捨てられたボロ布を拾い、つなぎあわせてお衣を作っていたそうです。
和尚様は、お師匠様から頂いた一枚の袈裟を大切に、大切に使われておりました。
その和尚様がご導師を勤められた、お葬儀。亡くなられた方は、そのお寺のためにたいへん尽力された方でした。
お葬儀の開式前、故人様にご挨拶されるために 和尚様が式場へ入られました。そして、なにやら風呂敷包を開けられ、お柩の上に掛けられました。
このお袈裟は… 何度となくお話しされていたあのお袈裟でした。
想いのつまったこの袈裟をお柩にかけられたのです。今までそんな光景、見たことがありません。
大切なお袈裟だと知っていた私は、お別れのお花を皆様に手向けていただいた後のご出棺、霊柩車の中もそのお袈裟をかけて火葬場までお柩と一緒にしました。
もちろん、火葬場でご住職が持ち帰られるものだと思っていました。
しかし、火葬場から戻られた喪主様が「火葬場で、あのお袈裟を父の柩の中に入れてくださったんだよ」と、まだ興奮冷めやらぬ口調で教えてくださいました。
最後に、お勤めも終わったお話の中で、和尚様がおっしゃいました。
「ずっと大切に20年以上使っていた袈裟を今回、お柩の中に納めさせていただきました。お寺のために本当に良くしていただいた私には、そんなことしかしてさしあげられません。このお寺が今あるのも、そして私をここまで育ててくださったのも、お父さんのおかげです。ぜひ一緒に持って行っていただきたかった。
あの袈裟がなによりのスーパーマントですから、きっと良いところへ導いてくださるでしょう。」
もう「僕のこの袈裟ね」とお話しされることもなくなるのでしょうか。
少々残念ですが、今回お手伝いをさせていただけてなければ、大切になさっていたお袈裟の話を聞くこともできなかったことでしょう…。
このご縁に感謝いたします。
平安会館 文十鳳凰殿
担当 藤原 恵美
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