『母がまだ元気でわが家に遊びに来た時、テレビを見ていて「偉い人がいるね。ご主人の給料袋をみんなとってあるそうだよ」と感心していました。
「私もとってあるよ」と言うとびっくりして、お褒めの言葉をもらいました。
主人は42年間の仕事を終えて既に退職しましたが、結婚して35年間、私は給料袋を1年ずつ帯封をして保存をしてきました。
全部で35束。
ただ捨てられなかったというだけで褒めてもらうほどのことではありませんが、今では私の大切な宝物です。
そして、ただの一度も封を切らずに手渡してくれた主人に本当に頭が下がります。
袋自体にも歴史があり、結婚したてのころは薄っぺらな小さな封筒でしたが、何年かして少し大きめのしっかりした封筒になりました。
転勤が多い仕事でしたが、帯封を見ればいつどこで仕事をしていたかが一目で分かります。
二人の子どもは既に結婚して家を巣立って行きました。
給料袋の中身もどこかへ巣立って行ってしまいましたが、35束の給料袋には、私たち家族の歴史が今もいっぱい詰まっている気がします。
これからも大切にして、時々は箱の中をのぞいてみようと思っています。』
こちらは今から10年と少し前、ある新聞に記載されたエッセイです。
このエッセイを投稿したのは先日、平安会館 新華苑 岡崎六ツ美斎場にてお葬儀のお手伝いさせていただきました故人様です。
喪主を務められたのは長年連れ添ってきた旦那様。エッセイの中の「主人」様です。
お葬儀の打合せの際、故人様が大切にされていたものや作品などで式場に飾ってあげたいものはありますか?と伺うと、ご長女様から返ってきた言葉は
「お父さんじゃない?(笑)」
その言葉に旦那様も
「ほぉだの。そりゃ俺だなぁ。俺が立っとくか」と満面の笑みで冗談をおっしゃっていました。
そんなことを言いながらも、実際に式場に飾ったのは≪旦那様の作った≫カエルの置物。
故人様の作品ではないのに…?
そう感じるかもしれませんが、こちらは故人様が【皆が無事に帰ってくるように】と大切に自宅の玄関に飾っていらしたそうです。
お葬儀の日には【皆が式場から無事に自宅へ帰れるように】。
「きっと母はそう思ってくれています」とご長女様より伺いましたので玄関口のお見送りできる場所へ飾らせていただきました。
そんな、お互いがお互いを大切に思うご夫婦の絆。
心温まるお葬儀でございました。
平安会館 新華苑 岡崎六ツ美斎場にてお世話になりました皆様、まだまだ冷え込む日々は続きます。
体調等崩されませんようお気をつけくださいませ。
平安会館 新華苑 岡崎六ツ美斎場
担当 伊藤里帆
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